CLAの基礎知識


ハンドブック

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 「CLA 共役リノール酸」ハンドブック
   監修:九州大学・熊本県立大学名誉教授 菅野道廣  先生

 CLA(共役リノール酸)は、1930年代に食用油の研究中に「共役酸」として発見された物質です。
 その当時は食用油には不必要なものと考えられ、あまり注目されませんでしたが、20年ほど前に生理機能のある 不飽和脂肪酸として再発見され、発がん抑制物質であることから、一躍注目を集めるようになったのです。
 こうしたことから、CLAの研究がさらに進み、体内の脂肪を燃焼させる働きがあり、生活習慣病を誘発する メタボリックシンドロームの予防に関して、有用な物質であることが明らかになってきました。
 CLAは、自然界では牛など反芻動物の乳や食肉中などに含まれていますが、自然界で取れる量は限りがあり、 べに花油(サフラワー油)を加工してつくられるようになっています。
 日本は、世界でも屈指の長寿国となっています。しかしながら、その反面、肥満を原因とした生活習慣病が、 健康づくりの大きな問題となっています。
 食生活の欧米化や運動不足、喫煙などがメタボリックシンドロームの原因と指摘されており、食生活を含めた 改善が必要な時代となってきました。
 CLAについて書かれた本小冊子を手にとっていただき、肥満防止や健康づくりに役立てていただければ幸いです。

(「まえがき」より)

 出版元((株)健康産業流通新聞社)のホームページ

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CLAとは? CLA(共役リノール酸)の構造図

1980年代、ウィスコンシン大Pariza教授らは焼いた牛肉ハンバーグ
中に 化学発ガンを抑制する物質を発見しました。その抽出物質を
精製・分離 した結果、炭素数18個で9位にシス、11位にトランス配
置の二重結合を有するリノール酸の異性体であることが判明しまし
た。単結合と交互に なっている二重結合は『共役』していると呼ば
れるため、この脂肪酸はシス9、トランス11-CLA(共役リノール酸)
と呼ばれます。通常のリノール酸は二重結合を9位と12位(いずれ
もシス)に有しますが、CLAは9,11-、10,12-の ものを中心として、
7,9-, 8,10-, 11,13-といった 様々な形が存在しています。現在、
CLAが有する広範囲な生理機能が 注目を集めています。







CLAの発見

1930年代
一定の条件下でリノール酸を加熱するとCLA(共役リノール酸)が生成することが知られるようになる。
     

1966年 C.RE.Keplerら(J.Biol.Chem.,241, 1350)
腸内細菌によってCLAが生成されることを発見。

 

1979年 M.W.Parizaら(Cancer Lett.,7, 63)
焼いたハンバーグ抽出物質からガン抑制物質を発見。

 

1985年 M.W.Parizaら(Carcinogenesis,6, 591)
ハンバーグ抽出物質がDMBAで引き起こされる皮膚ガンを抑制することを発見。

 

1987年 Y.L.Haら(Carinogenesis,8, 1881)
ハンバーグから抽出物質を生成・分離した結果、CLAであることが判明。
ラボで合成されたCLAが皮膚ガンを抑制することを確認。


CLAの一般食品中の含量 食品中のCLA(共役リノール酸)含量

CLA(共役リノール酸)は反芻動物の胃で牧草中のリノール酸から
作られており、反芻動物由来の食品に微量含有されています。

特に、牛肉、牛乳、バター、アイスクリーム、チーズなどにあります。
食品として摂取できる量は欧米人で約500 mg/日 であり、日本人
では200 mg前後であると言われています。










CLAの有益な生理機能 CLA(共役リノール酸)の有益な生理機能

CLA(共役リノール酸)の生理活性に関する関心は、抗変異原性 を
示すことから始まり、化学発ガン抑制、ガン細胞増殖抑制効果とい
った制ガン作用は様々な組織において報告されています。 抗肥満
作用に関する本格的研究は1990年代後半からで、ウイスコンシン
大学のPariza教授らは、CLAを添加した餌でマウスの体脂肪量が
著しく減少することを初めて見出し、近年ではヒト試験が多く実施さ
れつつあります。その他に、免疫機能の改善、動脈硬化、糖尿病
の 予防・改善、血圧上昇抑制作用など生活習慣病の予防作用が
期待されています。CLAにはいくつかの異性体が存在しますが、こ
のような 多彩でかつ高い生理機能は、異性体の種類によっても作
用が異なることが知られています。










CLAを中心とした共役脂肪酸の微生物生産

CLA(共役リノール酸)の医薬・食品としての用途を鑑み、 異性体選択性が高く安全な生産手段の開発が求められている。これに関し、微生物
機能を利用したCLA生産が注目を集めている。 実際、反芻動物由来のCLAの合成には、反芻胃に生息するルーメン細菌が関与していると言わ
れている。微生物生産法として、リノール酸、リシノール酸、trans-バクセン酸を原料とするプロセスが検討されている。(図)

Lactobacillus acidophilusL. plantarumに属する乳酸菌にリノール酸をCLAへと変換する顕著な活性が 見いだされている。生成するCLAはcis
-9,trans-11-octadecadienoic acid(CLA1)およびtrans-9,trans-11-octadecadienoic acid(CLA2)である。同様の反応が、α-ならびにγ-リノ
レン酸を原料とした際にもおこる。これらの乳酸菌はリシノール酸 (12-hydroxy-cis-9-octadecenoic acid)をCLA(CLA1およびCLA2)へと変換
する能力も有している。また、MortierellaDelacroixiaRhizopusPenicillium属などの糸状菌は、trans-バクセン酸(trans-11-octadecenoic
acid) をΔ9不飽和化反応によりCLA(主にCLA1)へと変換可能である。これら以外にも、ある種の嫌気性ルーメン細菌により、リノール酸 より
trans-10,cis-12-octadecadienoic acidが生産されることが報告されている。


引用:Ogawa, J, S. Kishino, A. Ando, S. Sugimoto, K. Mihara, S. Shimizu. Production of conjugated fatty acids by lactic acid bacteria.J.
Biosci. Bioeng.
,100(4), 355-364 (2005).